ドックフードの価格帯は幅が広く、安いものだと300円/kg〜。プレミアムドックフードと呼ばれるものだと2,000円/kg〜、中には5,000円/kgを超えるものもあります。
疑問に思った事はないでしょうか?ここまで価格が違う理由って何なの??って。
高いドックフードには良い原料が使われている。それは確かにそうなのですが、成分表示を見ると安いドックフードも高いドックフードも変わらなかったりします。そして安いドックフードも『総合栄養食』として販売されている・・・
私は飼料メーカーで10年以上働いており、配合設計を嫌と言うほどやっていたのでこの辺の事情が分かるんですよね。なので今回は『安いドックフードはなぜ安いか?』これについて徹底解説していきます。
目次
安いドックフードが安い理由|ドックフードの原材料費が安いものを使用しているから
まずドックフードの原価ってどうなっているのか?それを紹介しておくと・・・
ドックフードの原価
原価=原材料費+加工賃+包装費+広告宣伝費
細かく言えばここに輸送費(運賃)なども加わりますが、ざっくり原価として考えればこんな感じ。
安いドックフードとは『原材料』『加工賃』『包装費』『広告宣伝費』これらの項目が安いという事ですね!そしてこの4つの項目の中で大きな割合を占めるのは『原材料費』となります。
つまり安いドックフードは使っている原料が安い。まあこれは誰でも想像がつくかと思います。ここで安いドックフードの成分表を見てみましょう。例として日本ペットフードが販売している『ビタワン』の原料表を紹介しておきます。ちなみにビタワンはAmazonで購入すれば280円/kgくらい。かなり安いですね。
ビタワン原料表示
穀類(トウモロコシ、小麦ふすま、脱脂米糠、コーングルテンフィード)、肉類(チキンミール、牛肉粉、豚肉粉、チキンレバーパウダー)、豆類(脱脂大豆、おから粉末)、油脂類(動物性油脂、植物性油脂(オメガ-6脂肪酸含む))、海藻粉末(DHA源)、ビール酵母(β-グルカン源)、セレン酵母、乾燥キャベツ、オリゴ糖、カゼインホスホペプチド、ミネラル類(カルシウム、リン、ナトリウム、クロライド、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、コバルト)、アミノ酸類(アルギニン、トレオニン、メチオニン)、ビタミン類(A、B2、B6、B12、D、E、パントテン酸、コリン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物)、香料、バチルスサブチルス(活性菌)
ドックフードの原料表示は多く配合されているものから順番に記載するルールがあります。つまりビタワンだと穀類が最も多く配合されている、って事です。ネットでドックフードのランキングサイトなどでは穀類が最初に表示されているものは悪いドックフードとして酷評を受けています。
確かに肉や魚に比べれば穀類は安い。ただこれにはドックフードの闇の部分があってですね・・・原材表示の一番最初が肉系であっても安心できません。
例えば『穀類(トウモロコシ)30% チキン生肉20% 』これだと穀類が最初に表示されます。しかし『チキン生肉20% 穀類(トウモロコシ15% 脱脂米糠15%)』これならどうでしょう?チキン生肉の配合割合が同じなのに一番最初に表示できます。
ドックフードって原料の配合割合(%)まで表示する義務がないので、配合設計いじれば見た目だけ良くするのは簡単。%まで表示しているドックフードもありますが非常に少ない。例えばネットで高評価を受けている『モグワン』なんかはかなり原料表記が細かく記載されており良心的ですね。
→モグワン
では安いドックフードに多く使われている○○ミールは危険なのか??
安いドックフードがなぜ安いか?これは単純に原材料費が安い。これが理由となりますが、多くの飼い主さんが気になるのは、実際安いドックフードって安全なのか??ここではないでしょうか。
ネットのドックフードランキングで必ずと言って不安を煽ってくるのが『〇〇ミールは危険』って一文じゃありません?理由としては『何の肉を使っているかわからない』『4Dミートを使っている可能性がある』とかそんなんですね。
4Dミート
・DEAD(屠殺以外で死んだ動物の肉)
・DISEASED(病気の動物の肉)
・DYING(死にかけの動物の肉)
・DISABLED(障害がある動物の肉)
よくわからないネットサイトだと車で轢かれた動物の肉を使っているかもしれない・・・・とかもはや都市伝説のような事を書いていますが、〇〇ミール系はしっかり品質管理されています。
その理由として、例えばドックフードでよく使われる原料として『チキンミール』があります。これって畜産業や養殖業の餌としてもよく使われる原料です。
もしチキンミールが悪い原料だとすれば、畜産業や養殖業でも何か問題発生すると思いません??そんなことはない。私は飼料メーカーで働いていたのでチキンミールを製造する工場にも出入りしていました。チキンミール自体を試しに食べたこともありますが、結構美味しい。
畜産とか養殖の世界って成分保証値に関して非常に厳しいんですよ。畜産・養殖業の経費の割合って飼料代が大半を占めます。そして飼料の品質が飼育成績に直結します。飼料原料であるチキンミールが品質バラバラだと困りますよね・・・笑
これは他の〇〇ミールに関しても同じです。
肉の部分が少ないのでタンパク質の割合が少なくなる傾向はありますが、基本的にはイメージの問題で〇〇ミールはそんなに悪いものではありません。
ただし〇〇ミール系のタンパク質の含有量は生肉系と比べて落ちます。人間が食べる部分(可食部)を取り除いた後のものなので、タンパク値が低くなる。原価を抑えるために安いドックフードは肉系(〇〇ミールを含む)をそこまで多く配合できない。なので植物タンパクで補っています。
つまり安いドックフードとは別に悪い原料を使っている訳ではないが、原価を抑えるために肉類の配合割合が少ない。そのため肉類由来の栄養素が少ないため、植物由来のもので無理やり補っている。そんなイメージです。犬は元々肉食なので植物系が多すぎると消化するのに負担になってしまいます。
安いドックフードでもAAFCOの基準を満たし総合栄養食だから良いのでは??
先ほど紹介したビタワンですが、総合栄養食として販売されています。総合栄養食とは『そのドックフードと水だけで健康を維持できるような栄養的にバランスの取れた製品』の事で、この栄養バランスとはAAFCO(全米飼料検査官協会)の基準が採用されています。
要はAAFCOの基準を満たしておけば総合栄養食として販売できる、って事です。
ではビタワンの成分はどうなっているか?こちらを紹介しておくと・・・
保証成分値
たんぱく質20.3%以上 脂質8.0%以上 粗繊維4.0%以下 灰分9.0%以下 水分10.0%以下 カルシウム1.1%以上 リン0.9%以上
この成分値がAAFCOの基準を満たしているので、『総合栄養食』として販売できるのですが、AAFCOの基準を満たすのって実は簡単なんですよ・・・笑
ビタワンの場合、動物性タンパク源はチキンミールとなりますが、チキンミールの配合量は間違いなく少ない。なのでこれだけではAAFCOの基準を満たすタンパク質は確保できません。そこでコーングルテンフィードとかを使って補う。コーングルテンフィードはトウモロコシからコーンスターチを作る際に発生する副産物で主にトウモロコシの皮の部分なのですが、タンパク質は20〜25%くらいあり結構高い。
こうやって調整していく訳です。AAFCOの基準は『何の原料由来のタンパク質』かは指定されていない。つまり動物性タンパクであろうが、植物性タンパクであろうが関係ない。なので簡単に調整できる。そして総合栄養食として販売することができる・・・
AAFCOの基準を満たした総合栄養食です!!って記載されていると良い印象を受けますが、別にこれ大した事じゃありません・・・笑
事実『ビタワン』であっても総合栄養食でしょ??
安いドックフードの特徴まとめとドックフードの闇の部分を暴露
では最後に安いドックフードはどういうものなのかをまとめておきます。
原価を抑えるため肉類(肉・魚)の配合割合が低い。足りない栄養素を補うために植物性タンパク質で調整する。それでも売れるように『AAFCOの基準』や『総合栄養食』として販売する。
ざっくりこんな感じですね!!
で、安いドックフードの安全性はどうなのか?これは非常に難しい。使っている原料自体は栄養素が低く犬の体に負担になる。これはあります。ただ原料自体が危険で粗悪なものかと言うと・・・そうとも言えない。価格も重要な要素です。安いからダメって訳でもないんですよね・・・
個人的には300円/kg前後のドックフードは与えません。これは安全性や体への負担、って理由もありますが、愛犬には美味しいもの食べさせたくありません??笑
わたしドックフードは自分でも食べてみて味を確かめますが、やっぱり安いドックフードは不味いんですよね。どうせなら美味しいもの食べて欲しい。そんな理由でそこそこ高いドックフード与えています。理想は手作りフードなんでしょうが、毎日となると手間もかかりますし、必要な栄養素を確保するのも難しいですからね!!
こちらに安全なドックフードとは何ぞや?それについて記事書いているので良かったら参考にしてみて下さい
では最後にドックフードの闇の部分を少し紹介しておきましょう・・・笑
先ほどビタワンはAmazonで280円/kgくらいと紹介しましたが、間違いなく多くの飼い主さんは『安い!!』って感じたはずです。ですが私は結構高いな。そう感じました。
畜産とか水産養殖の中で一番高い餌って何かご存知でしょうか?答えは魚の餌です。養殖の餌が一番高い。特に『うなぎ』とか『マグロ』の餌はめちゃくちゃ高い。
魚の餌って主原料は『魚粉』なのですが、うなぎの餌は『魚粉』の中でも特にグレードの高いものが使われています。アジとかマイワシが原料なんですよ。普通はカタクチイワシの仲間、アンチョビーなんですけどね。
そんなうなぎの餌の単価・・・いくらだと思います?? 答えは400円/kgくらい。めちゃくちゃ高価な餌でもビタワンとそう変わらない。
ちなみに養豚の餌だと75円/kgくらいです。
何が言いたいかというと、畜産・養殖の世界は経済動物なので製造されている飼料の量は半端ない量です。愛玩動物である犬と比べても意味はないかもしれませんが、実はドックフードの原価ってかなり安い。原価に対してかなり高めの単価設定されています。
なのでビタワンのように格安ドックフードでも十分利益が取れている、って事ですね。
さらに言えば『広告宣伝費』を使う余裕もある。ドックフードってすごく広告多いと思いません??利益率が高いので広告宣伝費を使うのも販売戦略としてアリという事です。
だからネット上には謎のドックフードランキングサイトが乱立している。
ネットで一番高い評価を受けているモグワン、これネットでめっちゃ広告されていますし、最近だとテレビCMも流れています。でも配合設計を見るとプロ目線で見てもかなり良い。価格も同グレードのものに比べて安い。なぜそんな事ができるのか?
売るのが上手いんですよね。かなり広告宣伝費の割合をかなり高くして薄利多売でやっているはず。事実めっちゃ売れてます。モグワンがなぜ売れているかはまた別記事で詳しく解説してみようと思っています。今回はこの辺にしておきましょう!
もしドックフード関連で気になる事あればお問い合わせより気軽にメールして下さい。わたしの答えれる限りは真剣にお答えしますので!!